用語集
A-Z
B細胞 | リンパ球の一種で、異物の存在により活性化を受け、抗体を産生することにより、免疫効果を発揮する。 |
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B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL) | B細胞性リンパ球のがん化により生じる病気である。白血球の増加、リンパ節の腫脹、倦怠感、体重減少などが初期に見られる症状である。一般に進行が緩慢であることが多い。 |
DNA核酸医薬 | 核酸医薬のうち、DNAからできたもの。 |
IND(Investigational New Drug) | 臨床試験(治験)を行う前に準備する、新しい医薬品の安全性や有効性に関してまとめたパッケージのこと。 |
MCMタンパク質複合体 | 細胞分裂の過程でゲノムDNAの複製開始を司るタンパク質で、このタンパク質複合体の活性化・不活性化のサイクルが制御されることにより、1回の細胞周期にDNA複製が1回のみ行われるように調節されている。 |
mDC(myeloid DC:骨髄系(ミエロイド)DC) | 骨髄系(ミエロイド系)樹状細胞のこと。樹状細胞の一種であるが、病原体等の異物を認識し、その異物の情報をT細胞に伝えることで異物に特異的な免疫を活性化させる機能が良く知られている。cDC(conventional DC:コンベンショナルDC)と呼ばれる場合もある。 |
NK細胞 | リンパ球の一種で、異物の存在により活性化を受け、異常な細胞を攻撃することにより、免疫効果を発揮する。インターフェロンにより活性化される。 |
pDC(plasmacytoid DC:形質細胞様(プラズマサイトイド)DC) | 形質細胞様(プラズマサイトイド)樹状細胞のこと。樹状細胞の一種であるが、病原体等の感染により活性化して大量のインターフェロンを産生する。非特異的だが汎用的に働く自然免疫と呼ばれる免疫系を活性化させる機能が良く知られている。 |
POC(Proof of Concept) | 基礎的な研究で予想された薬の効果が、実際に動物またはヒトへの投与試験により証明されること。 |
QOL(Quality of life) | ヒトが、どれだけ人間らしい、自分らしい、幸福な生活をすごしているかを示す尺度。 |
RNAiテクノロジー | 二本鎖短鎖RNA(siRNA)を介して伝令RNA(mRNA)を破壊し、特異的に遺伝子の発現を抑える技術。RNAiはRNA interferenceの略で、日本語ではRNA干渉ともいう。 |
RNA核酸医薬 | 核酸医薬のうち、RNAからできたもの。 |
TLR(Toll-like Receptor、トル様受容体) | 動物の細胞表面にある一連のタンパク質(受容体)であるが、このタンパク質群の多くは、免疫系においてウイルスや細菌などの構成成分からなる異物を認識し、非特異的な自然免疫と呼ばれる免疫を惹起する働きがある。 |
T細胞 | リンパ球の一種で、異物の存在により活性化された樹状細胞により活性化され、サイトカインを産生することにより、免疫効果を発揮する(ヘルパーT細胞)。その他に、ウィルスに感染した細胞やがん細胞を直接破壊するT細胞(細胞傷害性T細胞)などがある。 |
VEGF(血管内皮細胞増殖因子) | 血管が新たに生じるとき(血管新生)に血管内皮細胞の活性化、細胞増殖の誘導に必要であるということが分かっている。 |
Wet型加齢黄斑変性 | 加齢により目の網膜にある黄斑部位が変性を起こす病態で、進行すると失明に至ることもある。網膜部に血管の新生が起こり、そこからの浸出物が溜まっている病態を特にWet型と呼ぶ。 |
あ-お
アンメットメディカルニーズ | 未だ有効な治療法が確立されていない疾患領域。 |
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遺伝子の発現 | 核内DNAに記録された遺伝子が、その機能を発揮する過程のこと。 多くは、酵素などのタンパク質の情報が伝令RNAからタンパク質合成工場であるリボソームに伝えられ、タンパク質が合成されることであり、その酵素が働くことで遺伝子の機能が発揮されることになる。 |
インターフェロン | ウイルスなどの侵入により活性化されたpDCなどの細胞より分泌される。 ウイルス増殖の抑制や細胞増殖の抑制などの命令を、他の細胞に伝える役割がある。 |
オリゴヌクレオチド | ヌクレオチドとは、核酸の単体のことであり、オリゴヌクレオチドとはこれが数個~20個程度連なったもののこと。 |
か-こ
核酸 | 細胞の核と呼ばれる構造体に多く含まれており、遺伝情報を記録しているDNAや、DNAの情報を読み取って遺伝子の機能をつかさどるタンパク質合成の指示書として機能するRNAのような物質のことを核酸と呼ぶ。 |
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核酸医薬 | 今後開発が進むことが期待される、核酸を標的とした次世代医薬品。既存の低分子医薬や抗体医薬と作用機序が異なることから、これまで治療が困難とされていた難病疾患への適用ができ、アンメットメディカルニーズを満たすことが期待されている。 |
関節リウマチ(RA) | 関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis、RA)は、関節の腫れや痛みを生じ、これにより関節の変形が生じる自己免疫疾患の一種。現在の治療法では、免疫抑制剤の使用や、対症療法として炎症による腫れや痛みを抑えるために抗炎症薬を用いたりする。 |
乾癬 | 皮膚病の一種で、赤い発疹が生じ(紅斑)、その上にかさぶた(鱗屑)が厚く付着し、ボロボロと剥がれ落ちる(落屑)という症状が起きる。乾癬はインターフェロンの産生と強く関連すると言われており、自己免疫疾患の一種であると考えられる。 |
希少疾患 | 対象患者数が非常に少ない病気。 時代によって治療の可・不可が異なり、また、国によって指定を受けるための患者数が異なる。 |
急性腎不全(AKI) | 急性腎不全(Acute Kidney Injury、AKI)は、急激な腎機能低下によって引き起こされる病気で、原因として腎臓の血流量の低下や、腎動脈の閉塞などで腎循環が途絶えた場合に発生することが多い。 |
虚血 | 血管の障害などにより、組織へ流入する血液量が減少し、酸素が十分に組織にいきわたらず、酸素不足となった状態。 |
抗体医薬 | 抗体とは、免疫系に属するB細胞と呼ばれる細胞から分泌されるタンパク質で、免疫系が病原体や体内の異常な細胞といった標的を排除するために標的だけに結合し、標的を破壊するための目印となる。この、標的だけに結合する特性を利用して、標的の排除や標的タンパク質の機能の抑制を目的として用いられる医薬品が、抗体医薬である。 |
骨髄腫(Myeloma) | 血液の悪性腫瘍の一種で、骨髄で作られる血液を作る細胞のうち、形質細胞ががん化した症例。血液のがんのため、一般に全身の骨で多発することから多発性骨髄腫(Multiple Myeloma)とも呼ばれる。貧血、全身倦怠、体重減少、腰痛などが起こる他、感染症にかかりやすくなる。 |
さ-そ
サイトカイン | 免疫を活性化するタンパク質の総称。 |
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細胞周期 | 1つの細胞が細胞分裂し、増殖していくための一連の事象があり、それが繰り返すこと。G1(Gap)→S(DNAの複製)→G2(Gap)→M(細胞分裂)という周期が繰り返されることにより、一般的に一つの細胞から二つの娘細胞が生じ、細胞が増殖してゆく。 |
細胞周期チェックポイント機構 | 細胞周期が正常に進行されているかをチェックする細胞内の機能で、異常があると細胞周期の進行を停止させたり減速させたりする。DNA損傷の修復などで異常の原因が取り除かれれば細胞周期の進行を再開するが、修復ができないような重度な異常の場合は、異常細胞を細胞死(アポトーシス)に誘導する。 |
作用機序 | 医薬品が効果を発揮するときに生体で起きる、生化学的現象。 |
自己抗体産生B細胞 | 体内の正常な細胞や組織に対する抗体を生み出すことで、自己免疫疾患の原因となるB細胞。 |
自己免疫疾患 | 免疫系は普段は正常な自分の組織(細胞・臓器など)に対して攻撃しないが、免疫系の疾患などにより、誤って自己組織に対して攻撃を仕掛けることがある。 これにより、攻撃された組織の損壊や炎症反応などが引き起こされた状態を、自己免疫疾患という。 |
脂質親和性 | ある有機化合物が、脂肪などの脂質に結合しやすいこと。 脂質親和性が高い場合、逆に水分子には結合しにくくなり、疎水性が高いことになる。 |
修飾 | 化学的に活性のある原子が集まった集団(残基)を結合させることにより、化合物に新たな性質を付与する化学的手法のこと。 |
樹状細胞 | 樹の枝のような突起構造がたくさん飛び出していることから、樹状細胞と名づけられた。 病原体の感染などから体を守る機能である免疫において、病原体や自分の異常な細胞と戦う細胞群に対して、どのような敵と戦うべきかを指示する機能を持つ。 |
腎移植後臓器機能障害(DGF) | 移殖される腎臓がドナーから摘出後、虚血状態に陥ることなどが原因で、腎臓移植後に正常に機能しなくなり、一週間以内に透析が必要となること。 |
ステロイド系抗炎症薬 | 抗炎症作用や免疫抑制作用を持つことから、多種の医薬品が発売され、医療の現場で広く使用されている。また強い免疫抑制が原因により、感染症をはじめとする様々な副作用が生じることが知られている。 |
全身性エリテマトーデス(SLE) | 全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus、SLE)は、関節、皮膚、内臓など、さまざまな全身の臓器に原因不明の炎症が起こる自己免疫疾患の一種。現在のところ免疫抑制剤の使用や、各種の症状への対症療法しか治療方法がない、根治方法のない疾患。 |
前臨床試験 | 医薬品をヒトに対して用いる前に、安全性や有効性を細胞や動物などに対して用いて評価する試験。 |
た-と
低分子医薬 | 比較的少ない数の原子が結びついてできた(分子量300~500程度)化合物を活性成分とした医薬品のこと。抗体医薬が出現する前の多くの医薬品がこのカテゴリーに入る。 |
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デリバリー | 配送、という意味であるが、医薬品の場合、医薬品が働いてほしい場所へ効率的に医薬品を届ける技術のことを言う。 |
伝令RNA(mRNA) | 核内にある遺伝子DNAの情報を読み取り書き写し、細胞質タンパク質合成工場であるリボソームまで伝える、RNAがつながってできた分子。 |
糖尿病黄斑浮腫(DME) | 糖尿病黄斑浮腫(DME)は,糖尿病の三大合併症といわれる糖尿病網膜症の疾患の一つ。 高血糖により、網膜内の血管障害があると、血管から血液中の成分が網膜の中心の黄斑に向かって漏れ出したり、血管の一部が瘤のように膨れる毛細血管瘤が形成されて、浮腫を起こした状態を糖尿病黄斑浮腫と呼ぶ。 |
特定疾患治療研究事業 | 難病患者の医療費助成制度。自己負担分の一部を国と都道府県が公費負担として助成。 |
難病 | 原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病、経過が 慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病。 |
難病指定 | 難病のうち、国が臨床調査研究分野として認定し研究を進めたり、難病医療費支援制度により医療費の一部が公費負担になるもの。 |
な-の
二本鎖短鎖RNA(siRNA) | 伝令RNAに結合できる構造を持っている、RNAがつながり2本鎖構造になった短いRNAのこと。細胞に入ったのち、対応する伝令RNAに結合、これを破壊するため、結果として伝令RNAが運んできた遺伝情報の機能を阻害することになる。 |
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は-ほ
パイプライン(医療用医薬品候補化合物、新薬候補) | 「パイプライン(医療用医薬品候補化合物、新薬候補)」とは、研究開発の段階から、臨床試験(治験)を経て、医薬品として販売されるまでの医薬品候補化合物のことを言います。パイプラインはおおまかに以下の段階を経て医薬品となります。 |
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非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION) | 非動脈炎性前部虚血性視神経症(Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy,NAION)は、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの影響で網膜の神経細胞がダメージを受け、視力の低下を引き起こす病態。 |
標的分子 | 医薬品がその治療効果を発揮するために、特異的に結合したりその機能を阻害したりする相手の分子。 例えば、がん細胞の増殖にかかわる細胞内の酵素などを標的とし、この酵素の機能を低分子化合物で阻害すれば、がん細胞の増殖を止めたりすることができる。 |
ファストトラック申請 | 重篤、または治療方法が未確定な疾患に対し、治療効果が期待できそうな開発中の新薬をFDAが優先的に審査する制度。 |
副作用 | 医薬品の投与によりもたらされた、望ましくない症状のこと。 有名なものでは、一部の抗がん剤では脱毛や貧血などが報告されている。 |
分子標的薬 | 特定の分子(タンパク質など)を標的として、病気の治療を行う医薬品のこと。例えば、がん細胞に対して、がん細胞が増殖に必要とする分子の働きを分子標的薬で抑えることにより、がん細胞の増殖を抑えることが出来る。分子標的薬の場合、副作用を起こすような分子に対しては効果を起こさないため、副作用が低くなることが期待される。 |
併用 | 医薬品を二つ以上同時に用いること。 治療効果を発揮するために必要な医薬品の量を下げながら、強い効果を観察できる可能性がある。 |
ま-も
免疫 | 体内に侵入したウイルスや細菌などの異物や、異常に増殖し始めたがん細胞などの異常な細胞を排除しようとする、体に備わる機構。 |
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免疫担当細胞 | 異物を体内から排除する免疫系で機能する細胞のこと。異物の存在により活性化を受け、抗体を産生したり(B細胞)、サイトカインを産生したり(T細胞)、異常な細胞を攻撃したり(NK細胞)することにより、免疫効果を発揮する。 |
免疫調節薬 | 病原体などから体を守る、免疫機能に対して効果を及ぼし、免疫効果の増強や抑制を起こす医薬品。 免疫効果の増強によりがんのような異常な自分の細胞を排除する抗がん剤や、異常に増強され自分の正常な細胞を攻撃する場合に免疫系の機能を抑制し、正常な細胞への攻撃を止める、自己免疫疾患対象の薬などが挙げられる。 |
免疫抑制剤 | 免疫系を抑制する医薬品の総称であり、例えば移植した臓器などに対して拒絶反応を防いだり、自己免疫疾患による症状を和らげるために用いられるのが免疫抑制剤である。 |
や-よ
薬理効果 | 薬の作用によりもたらされる効果。例えば、鎮痛剤の場合その痛みを和らげる効果・発熱を抑える効果などが上げられる。 |
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有害事象 | ヒトに対して臨床試験(治験)などで医薬品を投与した場合に、医薬品の効果以外にみられる、思わしくない現象のこと。投与した医薬品に直接関連する副作用とは異なり、投与した医薬品だけが原因でなく、投与の手法やその他環境要因が原因となっている可能性もある。 |
ら-ろ
リード化合物 | 医薬品開発の初期段階で見出された、期待される生理活性を有する化合物。 これを基にして、活性の増強、副作用の低下などの性質改良のために、化学的修飾などを施して医薬品の元となる化合物に仕上げていく。(リード最適化) |
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臨床開発 | 前臨床試験が終了した後、ヒトに実際に投薬し、臨床試験(治験)を遂行し医薬品開発を進めていくこと。 |
臨床研究 | 医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解、患者の生活の質の向上を目的として、臨床現場で、少数の患者を対象にして、研究目的でヒトでの研究を行うこと。 |
臨床試験(治験) | 医薬品を実際にヒトに対して試験し、安全性や有効性を確認するもの。 |
レーザー凝固 | 糖尿病黄斑浮腫の原因である、新生血管の増殖を抑え、浮腫を和らげる既存の治療法。 |